竹から生まれた美しいかぐや姫。
モテモテで5人の貴公子に求婚されるも全部断って月に行っちゃう。
残されたおじいさん、おばあさん、お別れしなきゃならないかぐや姫、悲しくて切なく、少し謎めいた昔話…
中学の国語の教科書で初めて出てくる古典文学作品の一つ、「竹取物語」。
かぐや姫の物語としてよく知られていますが、古文として登場するととたんに苦手意識を持ってしまう子もいるかもしれませんね。
古文としての「竹取物語」に苦手意識を持ってしまう前に、読んでおくのをお勧めしたいのがこの一冊。
竹取物語を現代語訳し、読みやすい物語に描いたジュニア向け小説です。
私は、古典文法を文法として本格的に学ぶ前に、物語や昔話としてあらすじを知っておくと有利だと考えています。
あらすじを知っているということは、細かな文法にとらわれずとも大意を理解できるということ。
大意を理解できるということは、古文を読むことが、既に知っているあらすじをなぞって確認しながら読む作業になるということ。細かい所を気にせず読めるので、らくに数をこなせるようになります。
そこからの経験則で、ついでのように文法の知識も得られるんじゃないかなと。
いわゆる「多読」で身につけるようなイメージです。
この本はわが子が小学3~4年の頃に買った、講談社青い鳥文庫という児童向けのレーベル。
児童向けの物語ながら、大人であり母である私が読んでも楽しめるお話になっていました。
読みながらうなずくこと、じんわり心に感じることが多々…
人の心とは、愛するとは。ただの昔話ではなく、人間の心を描いたドラマがそこにあって、それをわかりやすく伝えてくれています。
対象年齢は小学校中学年からとありますが、対象年齢のお子さんはもちろん、読書初心者の方が古典へと踏み出す第一歩にぴったり。
また、国語の授業で竹取物語をに取り組む中学生、古典に苦手意識の強い学生さん、そして人の心に興味のある大人の皆さまにも読んでいただきたい一冊です。
ジュニア向けのかわいらしい表紙なので書店で手に取りにくいな、という大人の方には、楽天koboやKindleなど電子書籍でも出ていますのでぜひ。
著者の時海結以さんの作品は他にも同じ青い鳥文庫の「枕草子 清少納言の輝いた日々」を持っていて、こちらも好きなお話です。
今回ご紹介するにあたり竹取物語と枕草子の両著作を読み返しましたが、やっぱり私はこの方の文章が好きなようです。そこで時海さんとはどんな方なのかな?と検索してみたところ、ご本人のホームページにたどり着きました!
時海結以さんホームページ 風の鳴る音
プロフィールによると、社会科の教員免許をお持ちで、かつ過去には学芸員として歴史・民俗資料の調査をなさっていたこともあるのだとか…
なるほど詳細で分かりやすい背景描写の所以に納得です。
それに加えて、児童向けの優しい言葉がしみこむように心に入ってくるんですね。
ほかに「あさきゆめみし」のノベライズもされているのは書店で見かけていました。
ただ、いかんせん源氏物語は長いので(漫画を持っていることもあり)手を伸ばさずにいたのですが、時海さんの書く源氏物語にも興味が出ました。こちらも読んでみようかなと思っています。(とりあえずは積読本に追加することになりそうですが)