『朝』太宰治 Osamu Dazai【Sentences written in simple Japanese】

・この文は、すでに著作権が切れた日本の小説やエッセイを、少し簡単な日本語に直して書いた文です。大人向けです。
This sentence is a slightly simple Japanese version of a Japanese novel or essay whose copyright has already expired.
・私の趣味と勉強のために、私が一人で書いています。私は専門家ではありません。だから、もしかすると間違いがあるかもしれません。I am writing alone for my hobbies and study. I'm not an expert. So maybe there is a mistake
本当は作家が書いた文を文を勝手に変えることには少し抵抗があります。言葉を変えると、文の雰囲気が変わってしまうからです。
日本語を勉強している皆さん!簡単な日本語の文を読んでその作家に興味を持ったら、どうかその作家が書いた本物の文を読むことに挑戦してくださいね!
Actually, I am a little reluctant to change the sentence written by the writer without permission. This is because changing the language changes the atmosphere of the sentence.
Everyone studying Japanese! If you read a simple Japanese sentence and are interested in the writer, please try to read the real sentence written by the writer!

 私は遊ぶ事が何よりも好きなので、家で仕事をしていながらも、友あり遠方より来るのをいつもひそかに心待ちにしている状態で、玄関が、がらっとあくとまゆをひそめ、口をゆがめて、けれども実は胸をおどらせ、書きかけの原稿用紙をさっそく取りかたづけて、その客を迎える。
「あ、これは、お仕事中ですね。」
「いや、なに。」
 そうしてその客と一緒に遊びに出る。
 けれども、それではいつまでも何も仕事が出来ないので、某所に秘密の仕事部屋を設ける事にしたのである。それはどこにあるのか、家の者にも知らせていない。

青空文庫 太宰治『朝』より引用

 わたしあそぶことがなによりもきだ。だから、いえ仕事しごとをしているあいだも、「ともあり遠方えんぽうよりきたる*1」のをいつもこっそりとたのしみにしている。玄関げんかんががらっとあくと、私はまゆをひそめ、くちをゆがめる。けれどもじつはとてもうれしいので、きかけの原稿用紙げんこうようしいそいでかたづけて、そのきゃくむかえる。
客「ああ、いまは、お仕事ちゅうですね。」
私「いいや、なにも問題もんだいない。」
 そうしてその客と一緒いっしょに遊びにかける。
 けれども、それではいつまでたっても何も仕事ができない。だから、ある場所ばしょ秘密ひみつの仕事部屋べやつくることにした。それがどこにあるかは、家族かぞくにもらせていない。

◇眉をひそめる…眉の間にしわをせるようす。いやな気持きもちや心配事しんぱいごとがあるときの表情ひょうじょう。
◇口をゆがめる…口のかたちげるようす。いやな気持ちやいたみがあるときの表情。
〇がらっと…などをけるおと

*1 ともあり遠方えんぽうよりきたる…友達ともだちとおいところからいにること。中国ちゅうごく古典こてん論語ろんご』からの引用いんよう(有朋自远方来)。

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毎朝、九時ごろ、私は家の者に弁当を作らせ、それを持ってその仕事部屋に出勤する。さすがにその秘密の仕事部屋には訪れて来るひとも無いので、私の仕事もたいてい予定どおりに進行する。しかし、午後の三時頃になると、疲れても来るし、ひとが恋しくもなるし、遊びたくなって、頃合いのところで仕事を切り上げ、家へ帰る。帰る途中で、おでんやなどに引かかって、深夜の帰宅になる事もある。
 仕事部屋。
 しかし、その部屋は、女のひとの部屋なのである。その若い女のひとが、朝早く日本橋のる銀行に出勤する。そのあとに私が行って、そうして四、五時間そこで仕事をして、女のひとが銀行から帰って来る前に退出する。

青空文庫 太宰治『朝』より引用

毎朝まいあさ九時頃くじごろ、私はつま弁当べんとうつくらせて、それをって、その仕事部屋にく。その仕事部屋は秘密の場所だから、たずねてくるひとはいない。だから、私の仕事はたいてい予定よていどおりにすすむ。しかし、午後ごごさん時頃にはつかれてくるし、だれかにいたくなるし、遊びたくなる。だから、ちょうどいいところで仕事をやめて、家へかえる。帰る途中とちゅうで、おでんやなどにみちして、家に帰る時間じかん深夜しんやになることもある。
 仕事部屋。
 しかし、その部屋へやは、おんなのひとの部屋だ。そのわかい女のひとは、朝はや日本橋にほんばしの、ある銀行ぎんこう出勤しゅっきんする。そのあとに私がその部屋へ行って、時間そこで仕事をする。そして、女のひとが銀行から帰ってくるまえにその部屋を出る。

◇~どおり(とおり/通り)に…~と同じように。「時間どおりに始める。父の言うとおりに動く。」
◇寄り道する…目的の場所へ行くときに、他の場所へも行くこと。
・おでん…日本の料理の名前。
・日本橋…地名。東京にある町の名前。

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愛人とか何とか、そんなものでは無い。私がそのひとのお母さんを知っていて、そうしてそのお母さんは、或る事情で、その娘さんとわかれわかれになって、いまは東北のほうで暮しているのである。そうして時たま私に手紙を寄こして、その娘の縁談に就いて、私の意見を求めたりなどして、私もその候補者の青年とい、あれならいいお婿むこさんでしょう、賛成です、なんてひとかどの苦労人の言いそうな事を書いて送ってやった事もあった。
 しかし、いまではそのお母さんよりも、娘さんのほうが、よけいに私を信頼しているように、どうも、そうらしく私には思われて来た。
「キクちゃん。こないだ、あなたの未来の旦那だんなさんに逢ったよ。」
「そう? どうでした? すこうし、キザね。そうでしょう?」
「まあ、でも、あんなところさ。そりゃもう、ぼくにくらべたら、どんな男でも、あほらしく見えるんだからね。我慢しな。」
「そりゃ、そうね。」
 娘さんは、その青年とあっさり結婚する気でいるようであった。

青空文庫 太宰治『朝』より引用

その女のひとと私は愛人あいじんのような関係かんけいではない。私がその女のひとのおかあさんを知っているのだ。そのお母さんには事情じじょうがあったので、むすめとわかれなければならなかった。いまは東北地方とうほくちほうらしている。そしてそのお母さんは時々ときどき私に手紙てがみを書いて、その娘の結婚けっこんについて、私の意見いけんもとめることがある。私はその結婚相手あいて候補者こうほしゃ青年せいねんと会って、女の人のお母さんに「あの人ならきっといいおっとになるでしょう、賛成さんせいです。」と手紙に書いておくったこともあった。
 しかし、いまではそのお母さんよりも娘さんのほうが私を
信頼しんらいしていると、私はかんじる。
「キクちゃん。この間、あなたの
未来みらい旦那だんなさんに会ったよ。」
「そう? どうでした? あの人はすこし、キザね。そうでしょう?」
「まあ、でも、
普通ふつうだろう。だって、ぼくにくらべたら、どんなおとこでも、あほらしくえるんだからね。我慢がまんしな。」
「それは、そうですね。」
 娘さんは、その青年と
簡単かんたんに結婚するつもりでいるようだった。

◇あほらしい…くだらない。つまらない。ばかばかしい。「そんなあほらしいはなしだれしんじないよ。」
キクちゃん…女の人の名前。
愛人…妻以外いがい恋人こいびとのこと。
東北地方…地名。日本の本州ほんしゅうきた部分ぶぶん。
旦那…ここでは、夫のこと。
キザ…自分をかっこよく見せようとして、るもの・言葉ことばうごきなどをかざること。「キザな男」

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つづく。長い文なので、またあとでつづきを書きます。More will be updated at a later date.

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